2025年12月3日– date –
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また、ここから
エピローグ いま、ここに
それから、ふたりは少しずつ、時間を紡いでいった。 特別な出来事はなくてもいい。ただ、笑ったり、ときどき黙り込んだりしながら、 あの日、静かに灯った小さな光を、ふたりで守り続けた。 記憶は、いつか戻るかもしれない。戻らないままかもしれない。 ... -
また、ここから
第5章 きみに贈る
今日は、どこか空の色まで、いつもと違って見えた。 図書館の窓から射し込む光は、いちだんとあたたかく、すべてを包み込むようだった。 ノアは、そこにいた。 かのが近づくと、ノアは、自然に顔を上げた。 それだけで、胸の奥がふっと満たされる。 もう、... -
また、ここから
第4章 ひとつの光
図書館に差しこむ光は、今日も変わらず、あたたかかった。 でも、かのには、それがいつもよりすこし、特別に思えた。 ノアも、そこにいた。 目が合った瞬間、小さな笑みが、自然にふたりのあいだに生まれた。 それだけで、胸の奥に、ぽっと、小さな灯りが... -
また、ここから
第3章 言葉にならない
図書館の扉を開けたとたん、なぜだか、胸の奥がふっと静かに満たされる気がした。 ノアは、もうそこにいる。そんな確信のようなものが、自然と胸に灯っていた。 かのは、何も言わずに席に向かう。ノアもまた、言葉をかけることはしなかった。 けれど、ふた... -
また、ここから
第2章 かすかな音
次に図書館の扉を開けたとき、空気のなかに、かすかに知っている匂いを感じた。光の射し方も、時計の音も、前と変わらないはずなのに、どこか、世界が少しだけ違って見えた。 ノアは、今日も奥の席に座っていた。かのを見つけると、ほんのわずかに、目元を... -
また、ここから
第1章 わたしを見つけてくれた人
大きな窓から、やわらかな光がこぼれていた。静かで、どこか時間の止まったような図書館。けれど、奥の壁にかかる古い大きな時計だけが、ゆっくりと、確かに時を刻んでいた。 かのは、そっと扉を押して、足を踏み入れる。胸の奥で、小さな音が鳴った気がし...
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