佐藤初女さんが握ったおむすびに込められていたもの。それは、「いのち」と「こころ」をそっと手渡す行為でした。
書籍情報
書籍タイトル:いのちをむすぶ
著者:佐藤初女
出版社:集英社
発売日:2016年3月4日
ページ数:128ページ
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はじめに
『いのちをむすぶ』をひとことで言うなら——「手から手へ」
初女さんのしてきたことは、どこまでもささやかで、静かで、まっすぐでした。
誰かのために、ただ一つのおむすびを結ぶ。
それは、何かを“してあげる”ということではなく、
目の前のその人の存在そのものに向き合い、「あなたのままでいい」と手渡すこと。
この本には、そんな“生き方”そのものが、言葉として、あたたかく残されています。
「食はいのち」——食べることは、生きることそのもの

「“食べる”って、ただエネルギーを補給することだと思ってた。
でもそれ以上に、“自分のいのちを支える選択”なんだよね。
初女さんが語る「食はいのち」という言葉には、
生きることをただ続けるのではなく、丁寧に引き受けていくという意思が込められています。
- 誰かが育てたものをいただくこと
- 誰かが整えてくれた手間に感謝すること
- そして、自分の“いのち”を支えるという選択を、自分ですること
そのすべてが、とても“意識的な営み”なんだと、静かに背筋が伸びるようでした。



おにぎりって、ただのごはんじゃなかったんだね…。
食べることって、“こころ”も一緒にむすんでるんだ。
「受け容れる」——ただ、そばにいるということ
受け容れるって、何かを許すことでも、わかりあうことでもない。



『ここにいていいよ』って、黙って隣にいてくれる。
そのだけで、心がほどける瞬間ってあるよね。



なんにも言われないのに、“わかってくれてる”って思えるとき、あるもんね。
そんなふうに誰かがいてくれることが、“生かされる”っていうことなのかもしれません。
「心」——尽きるどころか、深まっていく
私には心がある。
心なら、汲めども汲めども尽きることはありません。
初女さんがそう語ったとき、ふと思いました。
「心」は、誰かに差し出すことで“減るもの”ではなく、“広がっていくもの”。
- やさしさをかければ、相手の中にぬくもりが生まれる
- そのぬくもりが、また誰かに手渡されてめぐっていく
- そして気づけば、自分の中にもさらに深いやさしさが湧いている



“尽きない”というより、“深まっていく”んだね。
初女さんは、それを知っていた人だったんだと思う。
読んでよかったこと
読んだあと、不思議なほど心が静かになりました。
誰かにやさしくなりたい、そんな願いを叶えるには、
まず自分の心が整っていることが大切なんだと、あらためて思いました。
そして、たとえば「ちゃんとごはんを食べる」「無理せず、黙って寄り添う」——
そんなシンプルな行為こそが、いのちを支え、心をむすぶ行為なんだと。
こんな人におすすめ
- 自分を後回しにしていると感じる人
- だれかにやさしくなりたいけど、疲れている人
- “静かな生き方”に触れてみたい人
- 日々を少し丁寧に過ごしたくなった人
まとめ
『いのちをむすぶ』は、特別な技術や知識ではなく、
生きることそのものを大切にしたいと思える本です。



やさしさって、むすぶことなんだなって思った。
自分の心と誰かの心を、そっと手から手へ。



ぼくも、あったかいおむすび、にぎってみたくなっちゃった。