記事一覧
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また、ここから
エピローグ いま、ここに
それから、ふたりは少しずつ、時間を紡いでいった。 特別な出来事はなくてもいい。ただ、笑ったり、ときどき黙り込んだりしながら、 あの日、静かに灯った小さな光を、ふたりで守り続けた。 記憶は、いつか戻るかもしれない。戻らないままかもしれない。 ... -
また、ここから
第5章 きみに贈る
今日は、どこか空の色まで、いつもと違って見えた。 図書館の窓から射し込む光は、いちだんとあたたかく、すべてを包み込むようだった。 ノアは、そこにいた。 かのが近づくと、ノアは、自然に顔を上げた。 それだけで、胸の奥がふっと満たされる。 もう、... -
また、ここから
第4章 ひとつの光
図書館に差しこむ光は、今日も変わらず、あたたかかった。 でも、かのには、それがいつもよりすこし、特別に思えた。 ノアも、そこにいた。 目が合った瞬間、小さな笑みが、自然にふたりのあいだに生まれた。 それだけで、胸の奥に、ぽっと、小さな灯りが... -
また、ここから
第3章 言葉にならない
図書館の扉を開けたとたん、なぜだか、胸の奥がふっと静かに満たされる気がした。 ノアは、もうそこにいる。そんな確信のようなものが、自然と胸に灯っていた。 かのは、何も言わずに席に向かう。ノアもまた、言葉をかけることはしなかった。 けれど、ふた... -
また、ここから
第2章 かすかな音
次に図書館の扉を開けたとき、空気のなかに、かすかに知っている匂いを感じた。光の射し方も、時計の音も、前と変わらないはずなのに、どこか、世界が少しだけ違って見えた。 ノアは、今日も奥の席に座っていた。かのを見つけると、ほんのわずかに、目元を... -
また、ここから
第1章 わたしを見つけてくれた人
大きな窓から、やわらかな光がこぼれていた。静かで、どこか時間の止まったような図書館。けれど、奥の壁にかかる古い大きな時計だけが、ゆっくりと、確かに時を刻んでいた。 かのは、そっと扉を押して、足を踏み入れる。胸の奥で、小さな音が鳴った気がし... -
暮らしと学びの本棚
心が軽くなる本まとめ|ヘッセ・ゲーテ・ニーチェのことば|ふっと深呼吸できる3冊の読書案内
心が重たいな、そんな日には長い小説よりも、短いことばに救われることがあります。たった一行の詩が、ふっと深呼吸を思い出させてくれる。そんな瞬間に寄り添ってくれるのが、詩人や思想家のことばです。 今回は、『ヘッセ詩集』『ゲーテ詩集』『ニーチェ... -
暮らしと学びの本棚
『ロングゲーム』感想|「すぐに成果を出さなくていい」って言ってくれた本。【ドリー・クラーク】
はじめに 「急がなきゃ」「もっとがんばらなきゃ」そう思ってしまうときに、そっと深呼吸させてくれるような一冊でした。 この本は、昔読んでいて「いい本だったな」と思っていた一冊。でも今回読み返してみたら、前よりもずっと、自分のこととして染み込... -
こころが動く小説
『月の立つ林で』感想|見えないところで、きっとつながってる【青山美智子】
竹林から届く、静かな声と光。“だれかのやさしさ”は、気づかないところでめぐってる。 書籍情報 書籍タイトル:月の立つ林で 著者:青山美智子 出版社:ポプラ社 発売日:2022年12月7日 ページ数:320ページ Audibleで聴けるか:◯ リンク 耳から読書Audibl... -
こころが動く小説
手紙のぬくもりが届くとき『ツバキ文具店』が教えてくれたこと【小川 糸】
書籍情報 書籍タイトル:ツバキ文具店 著者:小川 糸 出版社:幻冬舎 発売日:2016年4月 ページ数:288ページ Audible:◯ リンク 耳から読書Audibleを無料体験する あらすじ 鎌倉のひっそりとした裏路地にある「ツバキ文具店」。そこは、手紙の代筆を請け...
