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第3話|くつしたと、わけっこのベンチ
くつしたをにぎりしめて、ふたりは公園にやってきました。
ベンチには、ぽつんと女の子が座っています。
赤い水玉の片っぽが、はだしの足のとなりでくしゃり。
「……あの、これ……おとしもの、かなって」
ハリーがそっと近づいて、くつしたを差し出すと、
女の子はびっくりした顔で、すぐにうつむきました。
「……ありがとう。おかあさんと、けんかしちゃって……」
ハリーも、コットも、なんて返していいかわからず、ちょこんと並んで座りました。
しばらくして、ハリーがリュックをごそごそ。
「これね、つぶれてない方のあんバターサンド。よかったら……」
女の子は、ちらっとふたりの顔を見て、くすっと笑いました。
「……じゃあ、わけっこしよっか」
パンの甘い香りが、ふわりと朝の空気にひろがって。
ベンチのまわりだけ、すこしだけあたたかくなった気がしました。
🌱きょうのひとこと:
「パンをわけると、こころもやわらかくなるんだね。」